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大阪高等裁判所 昭和24年(を)3896号 判決 1950年6月03日

被告人

斎藤敏一

外二名

主文

本件控訴は何れも之を棄却する。

当審の訴訟費用は被告人石川高市の負担とする。

理由

被告人斎藤敏市の弁護人赤松政雄の控訴趣意第二点について。

弁護人は本件衣料切符は交付責任者及び経由責任者の印がなく、無効のものであるからいわゆる公文書にならないし、行使の目的があるとはいえないと主張するけれども、原判決認定のように被告人等は本件犯行により一儲けしようとしたのであるから、行使の目的のあつたことは自明のことであり、本件衣料切符に所論の印がないから無効であるというが、偽造の衣料切符は凡て無効のものである。いわゆる公文書偽造罪に於ける公文書とは、世人をして公務員がその権限内に於て作成したものであると信ぜしむるに足る形式外観を具備するを以つて足るのであつて、本件衣料切符がかかる形式外観を具備することは押收に係る衣料切符の存在により明らかである。而してその形式に於て多少欠くるところあり、公文書として適法に成立せずといえども、右の要件を具備する以上偽造公文書に該当するのであるから、所論の責任者の印がなくても本件の成否を左右しない。論旨は理由がない。

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